手のひらサイズの命

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小さいながらも必死に生きていた。 しかし終幕はやってくる。 中学生になった私は、当たり前のように親が帰ってくるまで自分の家で過ごす日々が始まった。 兄弟のいない私はいつも一人だった。 時には一人でいることに寂しさを感じる事もあった。 しかし、兄弟という発想は全く無かった。 そんなある日、私はハムスターの存在を知った。 小さな彼らは私にとってとても可愛い存在だった。 ある日私は母に頼み込み、この2匹の小さな家族を買ってもらうことになった。 この小さな家族の存在が嬉しくてしかたがなかった。 一人でいる時でも彼らがいれば寂しくは無かった。 彼らは次から次に家族を増やし、いつの間にか小さな家族は小さな大家族になっていった。 生まれてくる子供はとても可愛かった。 生まれることが分かった時には、心を躍らせて新たな命を待ちわびた。 生まれたときには大きな喜びと幸福を感じていた。 しかし、そんな彼らにも旅立ちの時はやってきた。 最初は寂しさと別れの辛さを感じていた。 しかし、他の家族が旅立っていくうちに、悲しみという感覚は麻痺していった。 そして、小さな大家族の小さな家は終幕を迎えた。 小さな家族の存在がなくなった当時は、特になんの感情もなかった。 しかし、新たな家族を増やす気にはならなかった。 そして再び一人の生活が始まり、当たり前の日々が続いた。 私はそんな経験を積みながら、数年の月日が過ごした。 そして『ふー』という大切な家族に出会うことになった。 『ふー』の存在が私にとってこれ程の幸せを届けてくれるキューピットだとも知らずに。
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