理想と現実

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高校を卒業し専門学校での生活が始まってからも、私の生活にあまり変化は無かった。 高校生活との違いがあるとすれば、それなりに信念を持って学校に通い続けていたくらいだった。 高校とは違い、自分で選んだ学校。 いずれ役に立つ学習。 ただそれだけが私のやる気を生み出していた。 しかし、そんな学生生活に大きな問題が浮上した。 私の通っていた専門学校は、2年間の在学中に約1ヶ月の体験学習が3回開かれていた。 内容は専門職の現場を体験し、現場での学びを身につけるというものだった。 私はこの体験学習を通して、理想としている仕事と現実に存在しているものの違いにひどく胸をうたれた。 そして、将来の職に着く気の失せた私は、資格を取るためだけに通学をするようになった。 卒業を目前に控えた私は、就職活動などする気も無かった。 ただ資格を取るためだけの無難な勉強だけん進めていた。 卒業試験も終わり、無事卒業が決まった私は、今までと変わりなく、バイトと遊びに全力を注ぎ込んでいた。 そんなある日、携帯電話に着信が入った。 相手先には専門学校の名前が表示されていた。 電話の内容は、私の理想に近い職場があるという薦めの連絡だった。 しばらく内容を聞いていると、職員が急激に減り急募がかかった施設だという事が判明した。 そして最後に、こんな言葉を投げかけられた。 『体験学習を通して気づいた事をいかして、あなたの理想の施設を作りなさい。』 私はこの言葉に強い力を感じた。 確かに職員が少ない施設ならば、私の意見や気づきが通る事も多くなる。 そうすれば私の理想に少しでも近づける事ができるのではないかという考えが頭をよぎった。 しかし、それが難しい事も理解していた。 だが私には迷うすべがなかった。 この機会を逃してはいけないと感じた。 その電話から数日後、私は面接に向かった。 職場は大きなホテルの一部を改装した施設で、会社の大きさが理解出来る門構えだった。 個室に呼ばれ、面接はスムーズに行われ、淡々とした会話で終了。 後日、専門学校を卒業と同時に資格を手にする事になっていた私は、資格と共に新たな職に就く事となった。 そして、誕生日を迎えると同時に新たな生活が始めた。
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