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「ちょっ……どこに行くのよ!待ちなさいってば。」
黒の短髪でエメラルドをはめ込んなだような色の瞳をした少女が一匹の黒猫を追いかけて森の深部へと進んで行く。
格好は明るい紺の短パンに黒の胸元のあいたノースリーブ、その上にモコモコしたファー付きのベージュっぽい茶色のジャケットを着ており、ウエストポーチをしていた。
ちょ、ちょっとぉ~(汗)……仕方ない。
少女の名はリシェルリア・エイバーディア(通称:リシェ)は少し走るスピードをあげる。
ババッ!
「や~っと捕まえた。」
腕の中でジタバタする猫を抑えつけ、来た道を引き返そうと振り返った時だった。
ドン
「うわっ!」
誰かにぶつかり、その拍子に猫は腕の中から逃げ出した。
ニャ~。
「うそ~。ちょっと、どうしてくれるのよ!」
リシェはぶつかった男の胸倉を掴み木に叩きつける。
猫はリシェを馬鹿にしたように木の上で今の状況を観察している。
「す、すまん。」
その男は金の長髪をうしろで三つ編みにしていてサファイヤブルーの瞳をしており、服装は白のシャツ、紺のズボン、濃紺のマント、腰にはレイピア(刃の細い剣)をさげていた。
「謝るぐらいならカミュを捕えなさいよ!」
「カミュ?」
「あの猫の名前よ。それが出来ないんなら殴らせて!」
凄い剣幕をした私に男はタジタジしていた。
「おいおい、無茶を……ぐっ。」
私は答えが見えるやいなや、男を殴った。
「……つぅ。なんつー馬鹿力。」
男の胸倉から手を放し、跳躍して木にのぼる。
「おぉ!なんつー跳躍力。」
ムカッ
なんか悪口を言われた気分。
猫を捕まえようとしたが、猫はするりと私から逃げて木をおりた。
「ぷっ。ダサい。」
ブチッ
私は業と男の顔面に着地し、猫を追い掛けていこうとした。
ニャッ?
いきなり猫が空中に浮いた。
「……つぅ~。乱暴な奴だ。」
男は顔面をおさえて呟く。
私は半ば呆然としていた。
魔法…?詠唱なんて聞こえなかった。
「ほらっ。」
男は立ち尽くしている私に猫の首根っこを掴んで渡してくれた。
「あ、ありがとう。」
「なんて顔してんだよ。」
「いや、あんたが魔法使いに見えないから…。」
「ひどいなぁ。…あと、魔導師ね(汗)」
「そう。じゃあね、魔法使い。」
私はスタスタ来た道をかえろうと、きびすを返した。
「待ってくれ!」
男は私を呼び止めた。
「何?魔法使い。」
「魔導師だって。…その…帰り道が分からないんだ。」
「へ?」
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