一匹目

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「早く…ってその乗り物置いてくですぅ!」 「その注文は受け付けねぇ!」 俺とシャロンは窓から何かの部屋に潜り込んだ…のだが、俺は自転車をその部屋に引っ張り込もうとしていた。 「何でですぅ!?」 「これだけは嫌だ! これは… これはだけは…っ!」 そうしている間にも壁は自転車しかいない路地裏をどんどん狭くしている。 「嫌なんだぁぁぁぁっ!」 「…仕方ないですぅ。」 「は?」 俺はちょっと変な事を言ったシャロンの方を自転車を持ちつつ振り向いた。 そこに立っていたのは… 「この花嫁シャロンが花婿颯太様の手助けをするですぅ。」 ウェディングドレスを着た八歳位の女の子が。 …? え…? 「しゃ、シャロン…!?」 「ぅむぅ? どうしたのですぅ? あ!? まさかこの人型シャロンに惚れてしまったのですぅ!? もう! 颯太様ったらぁ!」 「…マジでシャロンなのか…!?」 だってさっきまで人じゃなくて猫だったんだぞ!? 「ほらほら! ちょっとその乗り物を固定したまま少し位置をずれて欲しいのですぅ。」 言われるがままに俺は少し退くとシャロン(自称…と信じたい)が自転車のカゴを掴んだ。 傘が刺せる位大きい網目なので指も楽々通る。 「いくですぅ!」 そう言うとシャロン(自称…?)は自転車を軽々部屋の方まで引っ張ってうぇぇぇぇぇ!? 「ふぅ。 任務完了! ですぅ!」 その声が引金となったみたいに窓の外は壁に支配されてしまった。 「しゃ、シャロン…?」 「ふぅ…久々に人間になったので疲れたですぅ。」 そう言うと女の子はどんどん小さくなって猫になにぃぃぃぃっ!!? 「シャロン…!? お前…一体…!?」 「にぅ? シャロンは獣人なのですぅ。」 「じ、獣人…!?」
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