-1:書店にて

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    「隠してないで、素直に出しなさいっ」      あたしが言うと、本屋のおじさんは困ったような表情を浮かべてあたしを見下ろした。      別に困らせようと思ってこんな事を言ってるわけじゃない。  あたしにとって、結構切実な問題なのよ。      こんなこと誰かに相談したところで、誰も信じちゃくれないんだし。  馬鹿な事言ってないで勉強しなさいとか言われるに決まってる。     「で、でもだね、お嬢ちゃん」      ああっ、もうっ。  じれったい。     「別に魔道書を普通の人間に売っちゃ駄目って決まりはどこにもないでしょ。  一等簡単な、そこのやつを寄こしなさい」      怒鳴るように言って、少し高いカウンターにお金を叩きつけた。    
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