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『楽しいね、いとこ殿。
ああ、本当に楽しくて仕方がないね』
その狂ったような笑い声は満さんのもので、薄れてきた砂埃の向こう側で輝く何かを振るっている姿が見える。
そして、その直ぐ近くには彼の姿。
とても楽しそうに笑って見える表情を浮かべて、同じように何かを振るってる。
――そう、笑ってみえた。
ただし、あたしに見せてくれる優しい笑顔じゃなくて、いつか見た、彼じゃないって思わせるようなあの顔で。
どちらかが揮った何かは相手に届く前に利き手とは逆の手から発せられる何かで打ち砕かれ、
無防備になったそこに利き手の武器が振り下ろされる。
だけどそれが中る前に、再び作られた何かがそれを防ぐ。
そこに蹴りが入り、それを避けるために飛び退く。
そんな攻防戦が一瞬の間に繰り広げられている。
それも目で追うのが限界に近い速さでそれは行われている。
そんな中笑う満さん。
狂ってる。
いかれてる。
そんな声が周囲から耳に届く。
そう思いたくなる気持ちは分かる。
アレは常人が考えながら出来ることじゃない、相手を殺そうと本能的に尤も効果的な力を振るってるようにしか思えない。
一撃一撃が、決まれは行動不能になるような――急所を狙った攻撃で、だけどその攻撃を入れるのにためらいがないから。
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