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『どっちの力が上なのか、身体に覚えさせてくれるんじゃなかったの。
ねぇ』
息切れもしてない、やっぱり楽しそうな声が聞こえる。
『ああ、そろそろ本気を出そう。
そろそろ身体も温まった頃合いだしな』
同じように息切れをしていない彼の声。
……って、そろそろ本気を出そう?
ということは、なに?
いま繰り広げてるコレは――。
「本気じゃないってこと?」
というか、準備運動?
あり得ないでしょ!
そう思ったのはあたしだけじゃないらしく、さっきまでとは違うざわめきが起こる。
ふたりのことが異常だって、非常識だって思ってるには違いないんだけど――畏怖するものを見る目じゃなくって、別次元の何かを見てるようなそんなもの。
「あは、はははははは」
疲れたように笑う幹さんの声と、
「これ以上力を出したら、さすがにコレももたないわ」
呆れたような万里ちゃんの声。
さすがに付き合いが長いだけあってふたりは慣れてるみたいだけど――。
「…………あれ?」
お腹に違和感っていうか、痛みが……。
「――っ!」
その場にしゃがみ込んで、縋るように万里ちゃんの服を引っ張る。
「どうしたの!?」
あたしの異変に気付いてくれた万里ちゃんに、出来るだけ小さな声で言う。
陣痛が来たみたい。って。
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