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「ううん、こんな時間まで心配して待っててくれたんだもの」
確かに疲れてはいるけど、その前に彼と話したいことがあったし。
少し賑やかなくらいが眠くならないで丁度いい。
「満さんとの試合、邪魔しちゃってごめんなさい。
本気で魔法を使える、最後の機会だったんでしょう?」
陣痛が来たと言ったあたしの言葉に、万里ちゃんは幹さんを叫ばせて試合を中断させた。
あたしが大変だ、という風に。
何か大技を使おうとしていたふたりはその声にぴたりと動きを止め、何人もの人が力を併せて作った〝壁〟を簡単に破壊するとあたしの元に駆けつけたらしい。
うずくまるあたしに万里ちゃんを睨み周囲を睨んだ彼は、万里ちゃんから陣痛だと聞かされるとあたしを抱き上げ浮かび上がった。
それからは空の旅。
両親どうしが魔法使いの場合、子供もほぼ間違いなく魔法使い。
魔力を持って生まれた赤子は、産声を上げるのと同じように、魔法を感情のままに使うことがあるという。
あたしは魔法使いじゃないからどうなるか分からないけど、彼の血が濃く出ることを考えれば普通の場所での出産は危険。
だからの処置なんだけど……後で大変だと思うわ、お義父さん。
飛行機よりも早いかもしれない速さで空を飛ぶなんて、まさしく魔法警察の案件だもの。
それに息子と息子嫁が関わってるだなんて――お義父さんなら笑顔でなんとかしそうだわ。
それはともかく、そんな風に慌てて病院に駆けつけたわりには時間がかかったのよね。
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