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「別にかまわない。
そんなことより大切だ」
彼は穏やかな感じに目を細め、あたしの髪を撫でる。
試合の時の笑顔とは、似ても似つかないそれに嬉しくなる。
「そこまで言われちゃうと、満さんに悪いみたい」
いとこ殿いとこ殿って、ずっと彼を気にかけてきたんだもの。
満さんの名前が出てきて彼は少しだけむっとすると、あたしから視線をずらす。
こういうところは子供みたい。
「それでね、あの子の名前なんだけど――」
なかなか話す機会が無くて言えなかったけど、お腹に命が宿ったって時からずっと考えてたこと。
「京、って字をつけようと思うの」
「けい?」
「うん。
あたしと貴方が深く関わるきっかけになった数字。
あたしと貴方は一京分の一の確立での出会いだったかも知れない、それを忘れないための数字」
実際はあたしの特異体質が原因だったんだけど、それを知るまでは、あたしと彼を結びつけていたのは一京分の一の確立での運命の出会い。
愛だの恋だの、そんなものよりは強い絆。
この子にもそんな強い絆の誰かが見つかるといいなって、そんな願いから。
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