-4:散る!

13/15
前へ
/331ページ
次へ
     最後の言葉はあたしに言ったものじゃなくて、彼に言ったもの。    彼が無言のままあたしを見てくるから、ベッドについてる手にそっと触れる。     「うわぁお、ラブラブだね。  マイスウィートハニー、俺も子どもが欲しいな」   「これからが一番急がしい時よ、身重になんてなっていられないわ」   「わかってるけどぉ」      万里ちゃんと満さんはいつものように軽口を交わすけど、その言葉がいつもと違う。  どうやら少しは仲が発展してるみたい。     「また来るわ」      踵を返した万里ちゃんとは逆に、満さんは彼に顔を寄せる。     「昨日の賭けは新米パパに免じて俺の負けにしてあげよう」      言ったその顔はにやにやと表すのが一番正しいような笑顔で、ちょっとだけ嫌な予感がしたわ。     「打ち合わせは落ち着けてからしようね、  愛しのいとこ殿っ」      締めとばかりにウィンクした満さんは、戸口で待つ万里ちゃんに慌てて駆け寄った。  
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

612人が本棚に入れています
本棚に追加