魔法少女になりたくて

－１：書店にて

　まだまだ子供だと思われても仕方ない年だけど、迷子になれば交番で道を尋ねるぐらいのことは常識。

「家までひとりで戻れない……とかか？」

　……。

　いまここで、こいつを殴っても許されるかしらね。
　ええ、許されるわ。

　ここまで侮辱されたのは初めてだもの。

「名前を言うことができるか？」

　何かがぶち切れる音を聞いた。

　そう、聞いたわ。
　間違いなく。

「人に名前を尋ねる前に、自分が名乗りなさいっ」

　言うが早いか、あたしの拳が直撃していた。

　しゃがんであたしの顔を覗き込んでいた、丁度のその顔に。
　クリーンヒット。

　う～ん、綺麗に決まったわ。