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「ご、ごめんなさい」
あたしは鼻を押さえる男の子に、何度目かの頭を下げた。
「いや、俺が悪かった。それにちょっと鼻血が出ただけだ。
気にしないでいい」
花柄のハンカチで鼻を押さえ、上を向きながら彼は言う。
そのハンカチはもちろん彼のものではなく、あたしの。
年より幼く見えて子供扱いされるのはいつもの事。
それなのに殴るなんて……大人気なかったわ。
「ホントに、ごめんなさいっ」
絵本みたいな魔道書とはいえ、本当なら手に入れる事が出来なかったはずのものを手に入れられるようにしてくれたっていうのに。
こんな目にあったら、やっぱり止めたとか言われちゃう。
「避けられなかった俺も悪い。せっかくの綺麗なハンカチを駄目にしてしまった。
それ以上謝られると、俺が逆に困る」
彼はハンカチを除けた顔で、にっこりと微笑んだ。
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