プロローグ

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ーー走る。 ーーー走る。 少女はその腰まで届く髪を水平になびかせながら走っていた 豪華な装飾が施された扉の並ぶ廊下を、木々の生い茂る庭園を。 一見、目的も無しに走っているように見える少女の足は、着実にとある場所へと向けられていた。 「ーーハァ、ハァ、ハァ」 本館から庭園を抜けた頃には少女の息は上がっていた。 「ーーハァ、ハァ、ハァ、ハァハァ」 それでも少女は走る。まるで走る事しか考えられないかの様に。 やがて少女は再び建物の中にはいる。 豪華を尽くした本館から見れば簡素な造りの建物の廊下は、それでも多くの装飾品をちりばめられていた。 薄暗い廊下の突き当たりで立ち止まった少女の目前には古ぼけた扉。 これまでの豪華な装飾が施された扉とは趣が180度違う木製の扉である。 木々は所々腐り、閂は錆び付いて赤黒く染まってしまっている。 しかし、なによりも他の扉と違うのは鍵である。 ーーー否。それはもはや鍵と呼べるものではなかった。 閂には十重二十重の鎖が巻き付き、それら全てを握りこぶし大以上の軟禁錠で束ねある。 「……。」 少女の手は鉄の戒めに触れていた。 「ーーーー。」 ーーーーーガチャンッ 一節。少女が歌うように一節の言葉を紡いだ瞬間、何百年もの間、ただの一度も開いたことのなかった筈の戒めは、いとも簡単に開いてしまった。 繋ぎ留めていたモノが無くなるのに呼応して、多くの鎖が音を立てて地に落ちる。 それでも閂に何とか引っ掛かっていた鎖を少女が払い落とす。 少女が最後の戒めの閂に手をかけようとした瞬間、扉の隙間から光が漏れ出した。 木漏れ日程度だった光は着実に大きさを増して少女の目を刺す。 薄暗かった廊下に少女の影が伸びる。 光は質量を持ったかの如く扉を勢いよく内側から突き破った。 青白い閃光は少女もろとも建物を飲み込んだ。 ーーーーー刹那、世界は青白く染まった、、、
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