第1章

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発狂しそうになるのを理性で押さえ、ケータイと対峙する。 「…………うぐぅ…」 しかし、事の終焉はあっさりとやってくる。 いきなりケータイが静かになる。それがどういう訳かわからず、たまらずケータイを見てみるとディスプレイには『不在着信』の文字。 あまり気の長くない萌の事だ、いくら待っても出ない俺に痺れを切らせたに違いない。 「………おぉ」 その事実がじわじわと浸透してくる。 「…おおぉぉ」 危機が自ら去って行った。 「おおおぉ」 肩の荷が降りて異常なまでにテンションが上がってくるのがわかる。 「おおおおお!!」 この幸せを自分だけで満喫するのが惜しい気がして窓を開けると同時に叫ぶ。 「やったーーーー!!」 通行人が何事かとこっちを見てくるがそれさえも気にならい 正直欝陶しかった太陽の輝きも今では違って見える。 「世界って輝いてるんだ。」 感慨深くってそんな言葉が自然と口から出た。 すると向かいの窓が急に開く。 そこには般若の様な顔をした女の子の姿。 「………も、萌」 そう言うのが精一杯だった。 サーッっと何かが下がる音を聞いた気がした。 飛んでくる広辞苑の背表紙がやけにゆっくりに見える。 なのに体はピクリとも動かない。直後に鈍痛。 薄れ行く意識の中で最後に、危機が自ら去ったのではなく。自分が出ないを選択した事をようやく悟ったのだった。
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