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ミーンミンミーン…
うるせえ。
「いつから夜まで鳴くようになったんだ…」
蝉の声が、夜の町にこだましている。
俺は、町の路地裏でぶっ飛ばされて寝てるところだ。
4人がかりでボコボコにされたらどうしようもない。
ケンカは、得意じゃねえ。
「クソッ、イチタロウにケンカ習っときゃ良かった…」
俺は、ゴミ袋にもたれかかって、ポケットから煙草を取り出した。
火を点けて、ゆっくりと煙を肺まで入れて吐き出す。
ふーっ
白い煙が、ゆらゆらと風に舞っていた。俺は、ぼけーっと、その煙に見とれていた。
「あれ、大谷乃亜(おおたに・のあ)…?」
「あ?」
煙の向こうから声をかけてきたのは、どっかで見たことがある女だった。
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