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「私、実家がこの地区じゃなくて、学校から1時間半かかるから、ここから通ってるの」
「ふぅん…」
「親からは反対されて、今はちょっとした勘当みたいな感じでさ…」
興味なさげに聞いていた俺だが、声の変化に気づき、梨花を見た。
梨花は俯いて、少し涙を堪えているような表情で語っていた。
「ちょっと待った!!」
「グズッ…なによ…?」
「別にお前の不幸話なんか興味ねえし、聞いて慰めて欲しけりゃ、金払え」
「へっ?」
「俺のバイト知ってんだろ?1000円にまけてやるからよ」
俺は、右手を差し出して金を催促した。別に、いつもの事だ。先払いね。
「っ…最低…」
「なんとでも言え。それを欲する女がいる、それも事実だ」
梨花は、差し出した俺の手を払った。
「あんたみたいにのうのうと生きてるヤツが一番ムカつく」
「知るかよ。あ、風呂借りて良いか?」
「もう勝手にしてよ!!放っておいてッ!!」
バン
投げつけられたタオルを手に取り、脱衣場に向かった。
タオルは、少し湿っていた。
「チッ、馬鹿女」
俺は、シャワーだけ浴びる事にした。
嫌な事があった日は、汗ごと流してしまいたい。
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