序章:開戦前

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 (あれが瑞鶴と翔鶴か……)  彼は九七艦攻の操縦席から四隻の駆逐艦とともに鹿島灘を航行する二隻の新鋭空母を見下ろしながら呟いた。  彼の機の周りには編成されたばかりの第五航空戦隊の二隻の空母に乗り込みを命ぜられた零戦・九九艦爆・そして九七艦攻が同じ方向に旋回飛行を続けている。 「総隊長機より入電、これより着艦訓練を行う。順序は艦戦・艦爆・艦攻の順、降りる艦を間違うな」  通信手の言葉に彼は姉妹艦である瑞鶴・翔鶴を区別するために飛行甲板の先端に近い部分に書かれた片仮名を見た。  ほぼ先端のやや左寄りにに”ス”と書かれた瑞鶴、中央部に”シ”と書かれた翔鶴。  (進路に向かって右側が瑞鶴で左側が翔鶴だな……)  彼が旋回飛行を続けながら着艦するべき翔鶴を確認していると、二隻の空母は風上に進路を変えた。  二隻の空母の前方と左右にいた四隻の駆逐艦のうち、左右にいた駆逐艦が着艦作業の目印になるために空母の後ろに回る。
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