『ぼくの嘘と、君の嘘』~君への告白  和泉 ヒロト

11/17
前へ
/17ページ
次へ
その10 「あたしも……ユージに……ユージに謝らなければならないことが……あるの……」 えっ? ぼくは、予想もしなかったチカの言葉に困惑していた。 「会わせたいひとがいるの……もうすぐ来ると思う……」 まさか……! 「……久し振りだな……コージ……」 そのとき、背中から掛けられたそんな声に、ぼくは一瞬にして固まる。 チカは。 そのとき、顔を背けるようにしてぼくから視線を外していた。 ぼくの向かいに座っているチカの隣に、本物のユージがゆっくりと腰を下ろす。 チカは、ゆっくりとぼくに視線を戻して、こう言った。 「……ごめんなさい……コージ……」 ぼくの視線は、テーブルの上を泳ぐ。 チカは、知っていたのか……。 ぼくが……偽物だと……。 「あたし、ユージが好きだった……」 チカの言葉が、ぼくの胸に突き刺さる。 チカは、やはり……。 ぼくではなくて、ずっとユージを見て来たんだ。 本物のユージだけを、ずっと……。 「ユージとは、何度もパーティーとかで逢ってた……一度逢っただけじゃないの……」 そうだったのか……。 ぼくはチカの告白に、目の前が真っ暗になる。 薄く流れていた店内のBGMも消えて、今はチカの声だけがはっきりと聞こえていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加