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その12
そのとき、背中から誰かがぼくに抱きついて来た。
それは。
チカだった。
「コージ!あたしの話を聞いて!……全部、ちゃんと話すから……」
ぼくは、チカの方を振り返らずに言った。
「……もう、いいんだよチカ……俺は、ユージじゃない。……ユージには……なれないんだ……」
歩き出そうとしたぼくの腕を、チカが掴んだ。
意外なほど、強い力で……。
「落ち着けよ、コージ。チカの話をちゃんと聞いた方がいい……」
ユージは、そう言いながら何故か微笑んでいた。
ぼくはチカに手を引かれて、のそのそとソファーに腰掛ける。
そんなぼくの隣には、チカが座っていた。
ぼくは、そのときユージに対して猛烈に腹が立っていた。
「ユージ、お前……どうしてチカを棄てたんだよ!?チカは……ずっとお前を待っていたんだぜ……俺を代わりにしてまで……」
ユージは、ポカンとした顔でぼくを見つめていた。
「おいおい……なに言ってんだよコージ……」
「お前、メールで書いたじゃんか!」
「うん?何を?」
「謝りたい人が、いるって……」
「あぁ、その話か……そうだな……それは……」
そのとき、ユージの顔が、急にこわばった。
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