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その2
ぼくがチカと初めて逢ったのは、渋谷のハチ公前だった。
そして、それから3つの季節が巡っていた。
その日は、確か日曜日だったと思う。
予定もないし暇だったぼくは、渋谷のHMVにDVDを見に出かけていた。
ブラブラとDVDを見たり、センター街のシルバーアクセショップを冷やかしたその帰り、ぼくはJRの東口に向かうためにハチ公のそばを通った。
相変わらず、人が多いな……。
そんなことを思いながら、ぼくは人ごみを掻き分けて歩く。
その時、ぼくはチカを見つけたんだ。
チカは何かを捜すように、キョロキョロと辺りを見回していた。
ぼくは、いつの間にか歩みを止めて、そんなチカの後ろ姿をボーっと見つめていた。
その時、振り返ったチカとぼくの視線が、真っ直ぐにぶつかった。
ドクッと一瞬、ぼくの心臓が悲鳴を上げる。
あれっ?
どうしたんだろう……。
こんなものすごい人ごみの中で、チカの姿だけがまるで、暗闇にスポットライトを当てたように光輝いて見える。
チカは相変わらず、じっとぼくを見つめ続けていた。
そして、しばらくしてチカは、ぼくにニッコリと笑いかけた。
チカがぼくのほうに、ゆっくりと歩いて来る。
えっ?
ぼくの心臓が、また悲鳴を上げ始めた。
そして、ぼくの目の前に立ったチカが、嬉しそうに笑いながら、こう言ったんだ。
「お帰り、ユージ」って、確かに……。
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