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退屈な授業を片耳で聞き流しながら、私はせっせと黒板に文字を綴る先生をなんとなく眺める。
何言ってるか全然わからない。
これ、本当に日本語?
そんなことをぼんやりと考え、ノートに目を向ける。
内容は理解できなくても、とりあえずノートだけは書いておこう。
そう思ってるのは私だけではないわけで。
ぼんやりとした眼差しで黒板を眺めている生徒は沢山いる。
黒板を見て、ノートを見て、文字を書いてと繰り返しているうちに、ふとある違和感に気付いた。
「先生さ、発酵の“酵”の字、間違えてない?」
隣の席に座っている唯に言われたことは、まさに今私も気付いたことで。
酵の字の左側…つまりへんが西になっているのだ。
これって確か酉だったよね…?
確認のため私は自分の机左下にシャーペンを走らせ発酵と書いてみた。
やっぱりおかしい。西じゃなくて酉だよ。とーり!
先生に教えようかと唯と話し合っていると、先に男子がせんせー! と声をあげた。
良かった。変な注目を浴びずにすんだ。
指摘された先生はなおすのが面倒なのか、お前らは間違えるなよと言うだけですませる。
こういう時、大人ってずるいって思う。
私たちにはこと細かくぐちぐち言うくせにさ。
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