魅惑な5文字

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体ばかり大人になっている。 見た目だけどんどん大きくなって、でも私自身はまだまだ子供で。 18歳ってこんなものなのかな? もっと…例えば恋人がいて毎日手を繋いで帰るとか、キスしてみたり、それ以上… そんなのは少女漫画の世界の話だってわかっちゃったことが成長なのかな? つまらないの。 でも、確実に大人に近づいてる。 小さい頃は親無しで電車にも乗れなかった。 ファーストフードもファミレスも、バイトだって憧れてた。 結局、全て慣れちゃってつまらないだけなのかな、私。 あれ? あこがれるってどんな漢字だっけ? さっきの酵の脇に瞳という字を書く。 これは“ひとみ”だ。あれ? あれ? と2、3回書いていたら授業終了のチャイムがなった。 あちゃー。また授業途中から聞いてなかったよ…。 いつものことなんだけどさ… 起立しながら携帯を取り出す。 “あこがれ”とメール作成画面で確認した。 そうそう、この字! 間違えて書いた文字の脇に正しく“憧”と書いて、私は途中まで写したノートを閉じた。 書き逃しは明日にでも唯にノートを借りよう。 …あいつが寝てなければの話しだけどね。 そうやって毎日なんとなく時間は過ぎていく。 半分も頭に入らない授業をなんとなく受け、なんとなくノートをとり、そして家に帰る。 こんなんじゃダメだって、分かってるんだけどね。
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