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嘆息まじりに言い切った司王に、カルマは何も言わなくなった。
ただ眠る鷹夜の、流れるような黒髪を優しく梳くのみ。
「聞いているのか……?」
反応のないカルマに司王は苛立ちながら言えば、カルマは笑みを見せた。
『ならば、追い出すか……?』
「ちっ……」
その言葉に司王は思いきり眉間にしわをよせ、そのまま採取してきた蛍石を手にした。
そして何事もなかったように、ルーペで一つ一つ確認していく。
「いい石だ……これほど良質なのは、初めて見た。」
『だろうな。
あの場所は、ミューズがいなければたどり着かない所だ。』
その感嘆の言葉にカルマも頷くと、それを横目で見ていた司王がようやくこちらに顔を向けた。
「思っていたんだが、ミューズって……」
『おそらくお主が考えている通りだと思うが、あの少女は森の名称となった者だ。』
その言葉に司王が今度は体ごと向けると、探るような目でカルマを見た。
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