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その言い分に司王が納得したように頷けば、さらにカルマは饒舌になる。
『魔物だからといって、必ず人間を襲うわけではない。
魔物の親や環境が、そういった凶暴性を養ってしまう。』
それによって魔物にも善と悪の魂ができる、とカルマは説明した。
「ならばあのミューズって女は、善の魂ってことか……」
『さよう……彼女は善の魂の持ち主であるから、黄泉の世界にいる。
逆に悪の魂の持ち主は、名もなき世界の住人となる。』
カルマがわかったかと視線だけを向けると、司王は面倒くさそうにまた鼻を鳴らした。
「まぁわかったと言えばわかったが、正直興味はないな。
今はとりあえず、俺の仕事をしたい。」
『魔具師か……』
淡々としたその言葉にカルマが言うと、予想を反して司王は首を横に振った。
「俺は国に認定されていないから、正確には魔具師ではない。」
自嘲ぎみに笑うその横顔を眺め、カルマはゆっくりと司王の手に視線を移す。
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