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そんな実状を知ってか知らずか、鷹夜はさらに言葉を重ねる。
「もちろんそれだけじゃないよ。
いい魔具師は、自分の使う道具を大切にする。」
そう言って、鷹夜は司王が先程まで使っていたルーペを見る。
色あせて細かい傷がいくつかついているが、ほとんど綺麗なままのルーペ。
部屋など自分の身の回りのことには頓着した様子がないのに、魔具に関する物に限っては小綺麗にしている。
そんな所からも、司王が優れた魔具師であるということがわかったのだ。
「だが、俺は魔具師ではない。」
司王は、憎々しげに言う。
それを鷹夜は何も言わずに、じっと司王を見つめていた。
「確かに魔具を作りだして大分たつが、俺には資格がない。」
だから路地裏の更に奥でならず者たち相手にしがない魔具店を開いているんだと、司王は目を逸らしながら呟く。
自分としては、学園をでただけの名だけの魔具師に負けるとは思わない。
そんなやわな仕事はしていないつもりだ。
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