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しかし、誰も自分のことを魔具師とは認めない。
魔具も作れる、一介の鍛治職人としか見られない。
そんな事実に憤りを感じる時もあったが、今では諦めの境地に立っている。
そんな思いなど知らない鷹夜はぎゅっと司王の手を握り、年齢に不似合いな淡い笑みを浮かべた。
「ねぇ、君は魔具師でしょ?」
「てめぇ……さっきの俺の話、聞いてなかったのか?」
「違う、そうじゃない。」
苛立ち半分呆れ半分で司王が口を開けば、思いのほか強い口調で遮られた。
そんな言葉に司王は目を丸くすると、鷹夜はまるで幼子に言い聞かせるように優しい声で囁く。
「資格なんて、後で取って付けたようなもの……大切なのはそこじゃない。
自分に、魔具師としての誇りや譲れないものがあるか―――つまり気持ちなんだよ。」
上手く言えないんだけどと鷹夜は照れ臭く笑うが、そんな少年を司王はじっと見つめていた。
「―――綺麗事だな。」
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