贈り物

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はっと目を開け、ゆっくりと周りを見渡す。 薄い日の光が差し込む窓に、埃っぽい部屋。 カバーの破れた古臭いソファー。 「寝ていたのか……」 司王は自問するように囁き、ゆっくりとソファーから立ち上がる。 普段適当に寝ているだけあって、特に体が痛いとは感じなかった。 そのままいつもの癖で顔を洗いに行こうと体の向きを変えるが、ふと自分の頬に触れてみる。 「何だよ、これ……」 そう言って、司王は困ったように笑みを零す。 頬に触れた手についていたものは、なんの変哲もない雫。 その雫を辿るように指を走らせ、自分の目をごしごしと拭った。 「なに、泣いてんだよ……」 自嘲気味に言い、自分の中にわだかまる何かを吐き出すように大きくため息をついた。 あんな夢、いつ以来だろう。 ここ数年、全く見なかったはずなのに――― 司王は覚醒させるように頭を振り、再び洗面所を目指して前を向く。 .
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