贈り物

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「だ・か・ら、チビじゃないっ!」 頬を紅潮させながら叫ぶ鷹夜を無視して司王は洗面所に行き、侵入を防ぐように扉を閉めた。 「泣いていた、か……」 鏡に映る自分を見れば、やけに腫れた目。 これだからすぐにばれたのだろう。 そんな自分を見たくないというように司王はいきなり鏡を叩き割り、その弾みで流れだした自分の血を見た。 赤の中に、少し黒を混ぜたような鮮血。 流れるままに身を任せていると、激しく扉を叩く音が響く。 しかし司王は扉に目を向けることはなく、動くことなく立ち尽くしていた。 「なにしてんだか……」 馬鹿らしくて笑いがでる。 司王は嘲るように薄く笑い、一気に蛇口を捻る。 そしてとまる気配のない血を簡単に流すと、適当にかけてあったタオルで拳を包んだ。 「……顔を洗うのを忘れていたな。」 気がついてから、司王は顔をしかめる。 いましがたタオルを使ってしまった。 しかも拳からは未だ血が流れている。 .
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