贈り物

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面倒くさそうにため息をつくと、司王は顔を洗うことなく扉を開けた。 後で濡れタオルで拭いたら、どうにかなるだろう。 そんなことを考えながらコーヒーでも飲もうとキッチンに足を向けるが、それを阻むように鷹夜が立った。 会ってまだ2日目だが、初めて見る無表情で――― 「邪魔だ。」 司王が欝陶しそうに声を低くするが、鷹夜は何も言わない。 面倒くさそうに舌打ちしながら横を通り過ぎようとすると、鷹夜は子供とは思えない強い力で司王の腕を掴んだ。 そう、タオルを真っ赤に彩るその腕を――― 「―――座れ。」 初めて聞く、鷹夜の命令口調。 それに司王が文句を言おうとするが、それよりも早くソファーまで引きずられた。 そして有無を言わせない勢いで座らされる。 「取るぞ?」 確認しておきながら司王の答えを聞かずに鷹夜はタオルを取り払うと、まるで自分が怪我をしたかのように顔を歪めた。 「馬鹿が……」 .
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