贈り物

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小さい声ではあるが、しっかりと司王の耳に入る。 しかも、先程までとは違う低い声だ。 「てめぇ、年上に向かって……」 「黙れ。 こんな怪我しておきながら少し生まれるのが早かったからと言って、偉ぶるんじゃない。」 苛立ちを隠すことなく唸る司王に厭味で返すと、鷹夜は静かに血の滲む拳に手をかざした。 「解毒術・解印(げどくじゅつ・かいいん)。」 鷹夜は拳の上でかざした手を左右に軽くふり、腫れ物を触るかのような手つきでかざしていた自分の手を握りこむ。 そして司王に見せるようにその手を開くと、その中には赤く染まった小さな鏡の破片がいくつもあった。 鷹夜はその破片を持ったまま逆の手をかざし、再び小さく囁く。 「治癒術・息吹印(ちゆじゅつ・いぶきいん)。」 かざした手から暖かい魔力が流れたかと思うと、裂傷となっていた拳の傷を瞬く間に癒していく。 そして全ての傷が塞がったのを見届けると、鷹夜はかざした手でそのまま司王の手をひと撫でした。 .
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