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すると先程まで拳を彩っていた鮮血は跡形もなくなり、あまりのことに司王はその手をまじまじと見てしまった。
「今のは……」
「解毒術と治癒術。」
司王の疑問に淡々と答え、手にした鏡の破片をちらりと見た。
「何があったか知らないけど、八つ当たりはもう少し賢くやりな。」
「余計なお世話だ……」
別に八つ当たりしたわけではないが冷めた鷹夜の言葉にかちんときて、司王は目を逸らしながら言う。
いや、八つ当たりか?
今日は物凄く夢見が悪くて、泣き腫らした自分の顔が昔の自分と重なって―――
「八つ当たり、だな……」
先程のことを回想して司王は小さな声で言い、バツの悪そうに舌打ちする。
しかしそんな司王など構わず鷹夜はカルマを呼ぶと、取り出した鏡の破片を渡した。
「とりあえず、直しておいてくれない?」
『御意。』
ぶっきらぼうに言った鷹夜にカルマは頷くと、破片を片手に洗面所へと向かった。
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