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鷹夜の言うことを素直に聞くのはカンに障るが、ここは逆らってはいけない。
司王は渋々といった感じではあるが、ゆっくりと目を閉じた。
瞬時に訪れる、暗闇の世界。
そんな世界を面倒くさそうに堪能していると、何かが右手に触れてきた。
おそらく鷹夜の小さく温かい手が司王の右腕を掴み、ゆっくりと持ち上げる。
その瞬間訪れた、冷たい感触と少しの重み。
それに司王は目を閉じたまま眉をよせると、鷹夜の言葉を待つことなく目を開けた。
「ちょっと、まだいいって言ってないのに……」
思った通り、鷹夜から批難の声が上がる。
しかし今の司王には、そんな鷹夜の声など入ってはいなかった。
「これは……」
自分の手首辺りに巻かれた、見たことのない宝飾。
細い銀の輪が幾重にも重なり、小粒ではあるが真紅の宝石がいくつもちりばめられている。
その宝石と銀の輪を繋ぐように金色に輝く細い棒がまるで蔦のように絡み、豪華であるが控えめな腕輪だ。
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