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しかしその姿を見て、一体誰がクルスだと気付くだろうか。
髪は驚くほど真っ白になり、顔も一気に老け込んでいる。
しかもその瞳には、先程までのギラギラした光は消え失せていた。
「これは―――誰なんだ……?」
見た目とは違いエネルギッシュだったクルスは、もはやいない。
呆然と瓦礫に座り込み、虚ろな瞳を天井に向けている。
「どうして―――どうして……」
その口から、まるで譫言のように紡がれる言葉。
何とも力なく、そしてみすぼらしい姿である。
「司王……」
「…………」
何も答えず、司王は大剣を強く握る。
そしてピタリと、その首筋に刃を向けた。
「あんたの野望―――こんなに脆いものだったんだな……」
無表情で、淡々と呟く。
しかし壊れたようなクルスが答えることはない。
それでも司王は言葉を続けた。
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