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――耳鳴りがする。それに少し息苦しい。
そっと目をあけてみると、そこは見た事もない場所だった。
海か湖の中の、ずっと底の方の様な気がする。
だけど海底というよりは、もっと人工的に造られた場所の様に感じる。
とにかく、自分が水の中に潜っている事は確かだ。
それでも、ちゃんと呼吸は出来るみたいだ。
さっきから感じていた息苦しさは、気のせいだとすぐに気付いた。
水の中に居るせいで、息が出来ないものだと勝手に思い込み、自分でわざと息をしにくくしてしまっていたのだろう。
それに、水の中に潜った時の耳鳴りの様なものにも、すぐに慣れた。
辺りは割と明るくて、時折何処からか、赤や緑の光が差し込んでくる。
(…これって、もしかしたら夢なのかもしれない。)
そんな考えが頭に浮かんだ。
夢の中で、これは現実ではないと気付くのは、そう珍しい事ではない。
これはきっと夢だ。
「誰かそこに居るの?」
突然、後ろの方から声を掛けられ、私は驚いて振り返った。
そこには、私と同じ高校生くらいの女の子が岩の上に腰掛けていた。
「あっ、あの…」
まさかこんな所に人が居るなんて、思ってもみなかった。
あんまり驚いて、それだけ言うのがやっとだった。
「びっくりしたぁ~…ここには誰も居ないって思ってたから。どうやって此処へ来たの?」
その子は言いながら近付いてくる。
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