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――こんな具合に、しばらく私達はどうでもいい話で盛り上がって(?)いたが、やがて2人とも喋り疲れて、黙って辺りを眺めていた。
「…ここは一体何処なんだろうね」
あさみが突然、そう呟いた。
「あさみは知ってるんじゃないの?此処が何処なのか。」
「…どうして?」
「え…だって…あさみは、この夢の中の人なんじゃないの?」
少しの沈黙の後、急にあさみは笑い出した。
「え?何?どうしたの?私なんか変な事言った?」
私は慌てて、あさみの顔を覗き込む。
「だって私とおんなじ事考えてるんだもん。」
どうやらあさみも、私の事をこの夢の中でしか存在しない、現実には存在しない者だと思っていたらしい。
これは、私にとって現実ではない夢だけど、あさみにとっても、ただの夢でしかないのだと、散々笑った後で、あさみは説明してくれた。
「こ~ゆうのって、凄く面白くない?」
あさみは本当に楽しそうな顔で言った。
「そう?」
「だってね、もしも、私も絵夢も2人共夢から覚めて現実に戻ったとしたら、本当に会えるかもしれないじゃない。」
そう言われると、確かにそんな気がしないでもない。
知らない者同士が夢で出逢って、それから現実で会えたなら、それは凄く素敵な事の様な気がする。
本当にあさみが実在する人なのなら、の話だけど。
それでも此れは、私の夢なのだから、きっとあさみは夢の中の人なのだろうけど。
とりあえず、
「そうだね、もしそうなったら面白いだろうね。」
とだけ、答えた。
すると突然、目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。
あさみが何か言ってるけど、よく聞こえない。
どんどん声が遠くなっていく。
(もう目が覚めてしまう…)
そう思った時、本当に目が覚めた。
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