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「どうだった?」
私はそう言って、ゆかりの顔を覗き込んだ。
今日は学校が休みなので昨日書き上げたばかりの小説を持って、ゆかりの家に遊びに来ていた。
ふぅ…っと息をついて、ゆかりがノートを閉じた。
「…どうだった?」
もう一度聞いてみる。早くこの話の感想を聞いてみたくて、ずっと読み終わるまで待っていたのだ。
「…凄いよね、なんか。どんどんこの話の世界に引き込まれちゃって読むのに夢中になっちゃった。」
そう言ってゆかりが笑うのを見ると少し安心した。
でもその安心も長くは続かなかったけど。
「絵夢ちゃんは将来小説家になりたいんでしょ?」
「…えっ?」
思わず聞き返してしまった。
だって、そんな事考えた事もない。
だけどそう答える訳にもいかなかった。
「それなら何になりたいの?」って、そう聞かれるのが怖いから。
小説家になりたくない訳ではないけど、だからといって、別に、小説家になりたくて、その為に書いてる訳じゃない。
「絵夢だったら絶対なれるって。私なんてもうファンになっちゃったもん。」
ゆかりが身を乗り出して、結構真剣にそんな事を言った。
「でも…」
(小説家になりたい訳じゃないし…)
そう言いたいのにちゃんと言えずに、続きの言葉を呑み込んだ。
「それにまだ小説家になりたいって思ってるんでしょ?」
「…うん…まぁ、そうかもしれないけど…」
言いたい事をハッキリ言えずに、よく解らない返事をしてしまった。
「昔から絵を描いたり小説書くのが好きで、挿絵の描ける小説家になりたいって言ってたもんね。」
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