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「あの、万年ニートのミイラ男よ。さっき、買い出しに出て行ったのを見たけど、いつも同じ服を着てる…洗濯物を干してるのも見た事無いし、お風呂にも入っているのかしら…」
ああ、またかと義雄を心の中で舌打ちする。
女という生き物はなぜこう他人の私生活を気にしたがるものなのか。
「いや、牙頭(がとう)さんは心臓の病気なんだよ。生まれつき心臓の奇形で…え~と、何て言ったっけ。とにかく、人付き合い良くないが、病気のせいで色々誤解されてるんだろ。あんまり悪く言うもんじゃ…」
「あなた、何も分かってないのね」
寿美子は義雄の言葉を組み伏すように言う。
「あなたは会社にいらっしゃるから知らないでしょうけど、時々あの家から妙な匂いがするのよ。何か動物が腐ったような匂い。もしかして死体でも隠してるんじゃないかって近所の…」
「やめないか。牙頭さんとはずっとお向かいだが、別に何もなかったじゃないか」
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