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二時間後、俺は町の中心部を目指して車を走らせていた。
対向する郊外へと続く道は、二車線ともふん詰まっている。いつまで経っても終わらない道路拡張の工事が、そこかしこで流れをせき止める。急速に人口の増えた歪みだった。道路も他の交通機関も整備される前に、仕事と金を求める連中が雪崩れ込んで来た。
帰る場所があるだけマシだ……
薄く開けた窓から、火の点いたままのタバコを投げ捨てる。俺が真っ当な仕事をしていれば、帰る場所があったのか。帰る場所があれば、ネクタイで首を絞めてまで働いていたのか……。
「有り得ん」
恋愛ごっこや家族ごっこなど、吐き気を催すだけだ。
ドライブスルーでアイスコーヒーとポテトを買う。窓越しに、店内でハンバーガーを頬張る家族連れが目に入った。いよいよ、酸っぱい物が込み上げて来る。吉田と知り合うまで、俺も腹を満たすためにハンバーガーをパクついていた。
数年前に開通した高速のインターを過ぎると、さすがに交通量は増え始める。インターから続々と吐き出される、他県ナンバーの大型トラックがノロノロと行く手を阻んでくれる。が、埠頭までおとなしくついて行く気など、俺にはさらさらない。
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