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放された筈の手首をまた掴まれて上に引かれる。
ずい、と岸波の顔が眼前まで近づき、視線と視線がぶつかり、私は困惑した。
「うん、気に入った」
「はな…」
放せ、と言おうとして私はそれが言えなかった。
既に近かった岸波の顔がまた一段近づいたかと思うと、額に一瞬の感覚。
気恥ずかしい音と共に訪れたそれに、不覚にも頬の熱が上がるのを感じる。
こ、こいつ…!
「ななななな何して」
「あれ?赤いな?デコチュー初なの?」
ケラケラ笑うコイツが異様に苛ついて、私はその目の前のコイツ目掛け思い切り頭突きを喰らわせた。
ぐわんぐわんと響く頭を押さえながら岸波から離れ距離を取る。
「ばっ…バカヤロー!お前なんかサッカー中にボール股間に直撃しろ!!」
そう捨て台詞を吐き捨てて、私はその場を後にした。
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