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「何?殴ればいいの?」
「んなわけないだろ。キスしろってことだよ」
「は!?」
私は眉間にしわを寄せて岸波を睨んだ。
何だコイツは。変な上に女タラシなんですか?一応元学年トップなのに。
「私に負けた悔しさでおかしくなっちゃった?」
「違う。てか何気自慢した?今」
黒い髪をかきあげながら岸波は私を見下ろしてくる。
私は見上げる形で睨みながら威嚇するが、岸波はくすりと笑みを浮かべると、私の耳元に唇を寄せた。
「何でもできるんじゃねーの?」
「!」
…いつもと違う、低くて挑発的な言葉。言葉遣いでさえ、どことなく荒い。
私はコイツがわからない。
「…いいよ。恥ずいから目ぇ瞑ってよ」
「…そうこなくっちゃ」
ふ、と目を閉じる岸波。
じっくり見てこなかったから気付かなかったけれどコイツはカッコいい部類に入る。そういや女子凄かったしね。
「……」
こくり、と生唾を飲み込んで、私はゆっくりと近づいていく。
あと少し。
バサッ
「ん?」
「はっはは!甘いわ!私の狙いはハナからコイツよ!!」
奪ったメロンパンを嬉々として片手にぶら下げながら私は教室へ走り去った。
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