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「水泳、ね…。それよかその前に球技大会あんだろ?」
「アイツ女じゃん」
「あ、そーだった」
へらっと笑う秋人に、どこか腑に落ちない俺がいる。もやもやと霧がかったような心中に、理解できずにいると秋人が言葉を続けた。
「で?実際問題どーなんだよ」
「あ?」
「好きなのかよ、日森」
好き?
誰が、誰を。
俺が?誰を。
日森を?
「別に?面白いから」
「…面白いだけか?」
「ああ」
他に何の理由がある?
いきなり厳しい表情を見せた秋人に、何とか平静を装って視線を逸らす。
秋人はキュッ、と上靴で廊下を蹴って一歩前に出た。
一歩分近くなった距離は、秋人の俺を睨むに丁度良いと言えるだろう。
逸らしたらダメだ、何故かそう思わせる。
「面白いだけでデコチューとかすんのかお前は?」
「……」
「違うだろ。気になってんだろ日森が」
「なってない」
それとなく返事を返し漸く秋人から視線を外した。
ああ、もうすぐ休み時間が終わる。
段々人気のなくなっていく廊下を眺めながらそう思った。
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