岸波遂VS日森七夕

8/18

828人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「水泳、ね…。それよかその前に球技大会あんだろ?」 「アイツ女じゃん」 「あ、そーだった」 へらっと笑う秋人に、どこか腑に落ちない俺がいる。もやもやと霧がかったような心中に、理解できずにいると秋人が言葉を続けた。 「で?実際問題どーなんだよ」 「あ?」 「好きなのかよ、日森」 好き? 誰が、誰を。 俺が?誰を。 日森を? 「別に?面白いから」 「…面白いだけか?」 「ああ」 他に何の理由がある? いきなり厳しい表情を見せた秋人に、何とか平静を装って視線を逸らす。 秋人はキュッ、と上靴で廊下を蹴って一歩前に出た。 一歩分近くなった距離は、秋人の俺を睨むに丁度良いと言えるだろう。 逸らしたらダメだ、何故かそう思わせる。 「面白いだけでデコチューとかすんのかお前は?」 「……」 「違うだろ。気になってんだろ日森が」 「なってない」 それとなく返事を返し漸く秋人から視線を外した。 ああ、もうすぐ休み時間が終わる。 段々人気のなくなっていく廊下を眺めながらそう思った。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

828人が本棚に入れています
本棚に追加