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「まぁいーや」
ぱっといつもの笑みを浮かべると、頭の後ろで手を組み教室へと足を向けた。
俺は、その後ろ姿をただ何となく眺めて、よくわからない自分のこの気持ちにただ動揺していた。
ドクドクと脈打つ心臓は、明らかにいつもより速い。
動揺を悟られないよう、きゅっと唇を結び、床を睨むように視線を落としたのだった…。
「ねー岸波君!今日って暇?」
「んー…」
暇っちゃ暇だけど…。
ホームルームも終わり、帰ろうとバッグを担いだ時だ。
いきなり呼び止められたかと思ったら、上目遣いでそう聞かれた。
…腹立つな。
上目遣いって人によるなと考えていたら、女は俺の曖昧な返事に少し膨れっ面。うわ可愛くねー。
「あのねぇー?日森さんっているでしょう?」
「日森…?」
ぴくり、と思わず反応してしまった。
女は続ける。
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