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「やっぱりね」
目の前にそびえる建物を見上げながら呟いた。
その建物の看板には『ひもりや』と書かれている。秋人は楽しみにしていたんだろう、何とも輝いた笑顔。
その建物の外装は、明らかに“居酒屋”だった。
「えぇ~日森さんち居酒屋なのぉ?私未成年なのにぃ~」
隣から聞こえる、語尾の伸びる苛つく声。
「じゃ帰れば」
そう冷たく言い放ち、暖簾をくぐって中に入るのは北間晴子。
北間なんて知らないと思ったが、あの時日森と一緒にいた女子だった。
秋人はその北間に続き意気揚々と暖簾をくぐっていく。
北間にバッサリと言われた女は口をあんぐりと開け放心している。
そして我に返ったように目を丸くすると、俺の腕にしがみつき引っ張るように中に入った。
何で俺の腕を掴むんだ。
無性に放してほしい。
中には日森が、いるんだろ?
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