負けられません、アイツにだけは

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いやね。 私は泳げないわけじゃないんですよ。私に不可能なんてないわけですし? 「じゃあいいじゃん」 「いやいやいや。あのね小櫃川君。私はね、下準備を怠ることが如何に愚かか承知しているよ。あくまで念のため、ね」 「神田川ね日森。念のため、ねェ。素直に泳げないから教えてって言えばいいのに」 「私が泳げない!?そんな寝言は寝て言えや」 「じゃあいいよな。じゃまた明日」 「すすすすみませェェェん!!無礼過ぎました、すみません!!はい、泳げないですカナヅチです教えてくださいまし」 「最初からそう言えばいいのに」 カラカラと笑う彼。 くそぅ、これがSという奴か。私はMじゃないぞ、多分! 認めたくはないが、確かに私は泳げない。 この高校はプールもないし、安心しきっていたのだけども、まさか水泳で勝負を挑まれるとは思わなかった。 どうも水中と言うものが慣れない。 とはいえ、あの岸波にあんなことを言われれば退くわけにもいかない。 25メートルも泳げない私の出した結論は。 「じゃあ市民プールで練習しよっか。取り敢えずアドレス教えて?」 「あ、うん」 中学時代水泳部所属だったという彼にご指導願った次第です。
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