愛称

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一人の年老いた紳士が、友人の家で夕食に招待された。 彼は、友人が妻を呼ぶ際に使う言葉に感心した。 愛がこもっているのである。 "ハニー"、"マイラブ"、"スイートハート"、"パンプキン"などなど。 この友人夫妻は、約70年間を共に過ごしてきたのだが、お互いに対する愛情は全く色あせていていないように見える。 友人の妻が台所に行った際に、紳士は友人にそっと身を寄せてこう言った。 「あんたは素晴らしいと思うわな、こんなにも長年の間一緒にいながら、まだ奥さんのことをかわいらしい愛称で呼ぶんだもんな」 友人は頭をガクッと下げた。 「正直に言おう。実は10年くらい前から、妻の名前を思い出せないんじゃ」
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