輝く恋‐雪‐

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 羽毛のように軽い雪がアスファルトに染みを作っていく。  夜空を彩る雪は決して積もることなく、地面に向けられた恋心は実らない。  雪が失恋していく中、男子学生は桜の季節に出逢った女子学生に連れ出されていた。  さっきまではクラスの皆とカラオケを楽しんでいたのだが、女子学生に手を引かれて、心は迷いながらも付いてきた。  女子学生の頬は夜の街に淡い恋の色を付け加えている。  そして、弱った中にも強さのある瞳で男子学生を見詰めた。 「あの、さ……」  そして女子学生はゆっくりと話し始めた。 「うん」  男子学生は緊張した面持ちに、緊張した声で相槌をうつ。  女子学生の頬の色はどんどんと赤みを増していき、淡い恋ではなくなっていた。 「私も、ずっと君のことが好きだったの……」  女子学生は舞い降りる桜を手に乗せるように呟いた。  これを聞いた男子学生は一瞬、目を見開いた。 「じゃあ……なんで」  なんで断ったんだ? 男子学生は暗にそう言っていた。  女子学生は俯いてから、目に力を灯して男子学生を見詰めた。 「自信が、無かったの。君と一緒に笑い合う自信が……。だけど、それはただ逃げてるだけなんだって気付いたの。だから、その……。今さらだけど、私と、付き合ってくれますか?」  女子学生は男子学生を伺うように、淡く強い視線をぶつけた。  男子学生は、恋する相手が自分と同じように“自信”が無くて悩んでいたことを知り、そして、それを打ち破って、しっかりと想いを告げてきたことに、心から歓喜した。  男子学生は女子学生を抱き締めた。  黄色い絨毯のように優しく、美しい花火のように強く。 「ありがとう」  男子学生は桜のようにゆっくりと言葉を舞わせた。  女子学生は、温かい男子学生の胸に顔を埋めて、首を縦に振った。  空から降る雪と、愛し合った二人の瞳から零れる涙が、地面に透明の染みを作った。  もしかしたら涙も地面に恋をしているのかもしれない。        ~Fin~
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