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少し離れた所から車のエンジンの音が聞こえた。
俺達はその音に気付き一緒に振り返った。
「あ……」
「あれって……」
「ユウキか?」
俺達はそれぞれバカみたいに順番に声を出していた。
その視線の先には、高そうな車の窓を開けて、運転席から俺達を眺める、一見ホストっぽい男性が居た。
そいつは、見た目はすごい変わったが面影はちゃんと残っている……
"山川ユウキ"だ……
ユウキは俺達を見ると車から降りて、深々と頭を下げた。
その予想外な行動に俺達は呆気に取られていたが、ユウキは頭を上げると何事も無かったように再び車に乗って、すぐに走り去ってしまった。
俺達はそれをただ見るしかない……
そして、車の姿が見えなくなった……
「もしかして、コレって……
ユウキが持ってきたやつ?」
チヅルが静かに言った言葉に誰も否定はしなかった。
ユウキは学校を辞めてから一度も顔を見せた事は無かった……
でも、その間でもユウキはユウキなりに責任を感じて居たのではないだろうか……
それか、もしかして……
ユウキは本気でミユキの事を……
俺はユウキが持ってきた花束を眺めていた。
それほど大きくない花束……
でも……
ユウキの"気持ち"が、ちゃんとこもっている花束だ……
そう思えて仕方がなかった……
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