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「どうせ私の料理は豪快ですよ~」
チヅルはひがみを言うように、ぷいとそっぽを向いた。
どうやら、俺が考えていた事がバレバレのようだ……
いや、単純に結婚したての頃に、チヅルの料理に対して
『お前の料理、豪快だよな。
ちょっとは女の子っぽい料理出来ないのか?』
と、俺が口を滑らせた事を根に持っているだけかもしれない……
「い、いや!そういう意味で言ったんじゃないから」
そんなチヅルに俺は慌てたように弁明していた。
すると、チヅルはそんな俺の態度に含み笑いをした。
「何慌ててんの?
もう何年も主婦してるんだから、ちゃんと作るよ。
ね~ミユキ~?」
「ね~」
チヅルが笑顔でミユキを見ると、ミユキもチヅルと同じように笑っていた。
そんな二人の笑顔につられるように、俺も自然と笑った。
その瞬間……
ふと、俺の中で今と同じ光景を見た記憶が蘇った。
それはミユキと付き合い始めた頃に見た"夢"……
ミユキの事で悩んでいた高校時代の俺が見た、将来の俺の姿……
子供と手を繋ぎ、笑顔を見せる俺……
それが今の俺だった……
もしかしたら……
あの時には既に未来は決まっていたのかもしれない……
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