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「……リュウジ?」
「え……あ、いや。何でもない」
チヅルの声に俺は我に返ると、誤魔化すように慌てて答えていた。
すると、チヅルは俺を怪しむように顔を近づけてきた。
「な~に考えてたのかな~」
「何でもないって!」
俺は近づくチヅルに少し後退りをしながら言い放っていたが……
どこか苦しい……
別に言っても問題はないと思うが、どこか恥ずかしい気持ちがあった。
でも、俺のその態度にチヅルは、少し機嫌を損ねたようにムッとした表情をしていた。
「また、そうやって怒る~」
「いや……ゴメン…
別に怒った訳じゃないから……」
俺は慌ててチヅルに謝った。
すると、チヅルはクスクスと笑い始めた。
「冗談だってば~。
そんなに謝らなくてもいいよ!
ほら、早く帰ろ!」
「そうだな」
チヅルの子供のような無邪気な笑顔に俺がそう答えると、俺達はミユキの手を引いて家路を急いだ。
その俺達を照らす日の光は、次第に傾き始めていた……
その空から雪をちらつかせながら……
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