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「ったく……リュウジは…」
「なんだよ?」
「別に、なんでもないよ」
チヅルは明らかに文句を言いたそうな口調で言ってきたのに関わらず、俺がまた無愛想な返事を返すと、チヅルはいつもの笑顔を見せた。
まぁ、チヅルにとっては俺のこの態度も慣れてしまったんだろう……
そう思うと、時が過ぎている事を実感してしまう……
それから少しの間、俺達はお互いに何も言わずに寒空の中で白い吐息を吐いていた……
すると、次第に寒さが身に凍みてきたのか、チヅルは自分の体を抱きしめるように体を小さくさせた。
その事に気付いた俺は横目でチヅルを見ていた。
「寒いのか?」
「ちょっとね……」
「……たく…」
チヅルの答えに、俺は小さな溜め息をすると、チヅルの肩を抱き寄せた。
すると、チヅルの冷えきった体が少しずつ温かくなってきた。
「こんなに冷たくなって……
お前の方が風邪をひきそうだぞ」
「かもね。
でも、リュウジあったかい……」
チヅルは少し甘えるような声でそう言うと俺の体に抱きついてきた。
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